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オカリナ・ノート 2014.7.14 木でオカリナを作る



木のオカリナ
 
 木でオカリナを作った。さきごろひとまず完成し、いまは毎日少しずつ吹きながら細かな調整をしている。
 
 もともとは、オカリナ・ノートの「傷ついた天使」で書いた博多人形土のオカリナを修復している途中で、レプリカを作っておきたいと思い、とは言え中の構造はあまりよくわからないので外から見てわかる範囲だけで真似をして作り始めたもの。私は陶芸の心得がほぼなく(幼稚園の卒園記念にカップを作ったことがある)、むかし木でオカリナを作ろうと思いながら着手していなかったことを思い出し、この機会に木で工作してみようと思った。
 陶芸ではないがオカリナの自作は経験があり、20年近く前に牛乳パックと紙粘土とアクリル画材を材料にC管を2つ作った。まあまあ鳴るように出来て、うち1個は音量は小粒ながらリコーダーのような澄んだ音が鳴り、あまり細かいうるさいことを考えなければオカリナはなんとか作れるものだなあと思っていた。ただ牛乳パックは加工が大変で、木だともう少し楽だろうと見込んでいた。
 
 5月の中旬ぐらいから取りかかったと思う(記録していない)。家に建材の端材(おそらくSPF材と呼ばれるものだと思う)があり、それをノコで切り、ノミや切り出しナイフや彫刻刀を使って整形し、ドリルで穴を開けてヤスリで調整して…という具合で、道具のお世話になりながらどうにかこうにか進めた。オカリナの作り方については書籍※があり、それも参考にしながら、また内部構造を知っているプラスチック製オカリナや、過去2作の経験も思い起こしながら(かなり忘れていた)の制作だった。
 実際に彫ってみると、木目や節や順目・逆目の問題があり、外観だけとはいっても原本どおりのレプリカを作るのは自分には難しいと思った。むしろこの木で彫りやすい形に彫っていくのがよいのではと思い、お手本から離れた独自モデルを作るよう方針を変え、いつのまにか彫り過ぎてしまったのでキーも低くした。ウィンドウェイ(吹き口から唄口までの間の息の通路)の整形にも失敗して一時は鳴らなくなってしまったりしたが、いろいろ手を尽くしてなんとかいちおうの「完成」にこぎつけた。
 
 キーはおおよそEに落ち着いた。調整穴を開けてあり、季節の変化によるピッチの変化に多少対応できるようにしてある。音色は、制作途中はとてもカラッとした、乾いたにごりのない音が鳴っていたが、彫り過ぎてその音色は変わってしまい、いまは少し寄生振動(ねらいの音高以外の微弱な音や振動が発生することを、電子回路の「寄生発振」にならって自分でこう言っている)が含まれた、ちょうど未加工乾燥材を手のひらでなでるような感じの、少しざらつきのある音が鳴る。ただ、音色や必要な息量は多少オカリナ側で調整することができ、少ない息でややぼおっとした感じの音色や、少し強めのはっきりした音色なども出すことができる。調整を繰り返して、いまは吹いていてそれなりに楽しめるところまでなってきた。
 
 オカリナを木で作るのにはもうひとつ思っていたことがある。このごろ、身近に見ていたいろいろな木が伐採されることが続いた。だいぶ前に、たまたまお会いした解体工の方とお話をしていて、ある学校の大きなクスノキを伐採することになり、あまりに惜しくてなにか記念になるものを残したいと思い、そのクスノキでテーブルを作って学校に寄贈した、というお話を伺った。その話をずっと覚えていた。
 どうしても木が伐られなければならなかったとき、そのようななにかの形を残すことに意味があるときもあるかもしれない。そういうとき、自分だったらなにができるだろうか…と思っていた。いや、これまでは、なにもできる気がしなかったのだった。が、今回オカリナのレプリカを作ろうかと考えるなかで、もし自分が木でオカリナを作ることができるなら、そういうときにはオカリナを作りたいと思った。それで今回思い立って手掛けたというのもある。
 
 SPF材というのはアメリカ大陸産のマツやモミの種類の木だそうで、柔らかくて加工しやすいとのこと。しかしまた変形しやすく、そして水気にはそもそも弱いらしく、笛の類にはあまり向かなさそうである。木の楽器には固い材のほうが響きがよいと言われているようで、リコーダーには固い材が使われているようすである。オカリナもおそらく同様なのだろう。でも自分ではこのオカリナの響き具合はそうわるくないと思っている。たぶんスギやヒノキでもこの響き具合と似た感じになるのでは…と思う。
 耐久性のほうはどのくらいか見当がつかない。いちおう場所場所にオイル処理や柿渋塗布を施して、ある程度の防水・防虫効果を得ることをねらったが、そうした処理ができず白木のままにしてある場所もある。まめに手入れして様子を見ながらできるだけ長く吹いていけたらと思う。
 
 アメリカ大陸の木ということで、地方は違うと思うけれど「Old Black Joe」を吹いてみた(mp3, 1.9MB)。いろいろアラがありますが御容赦ください。
 
※ 参考にしたオカリナ作りの書籍:
1. 藤原義勝 『オカリナをつくる』(シリーズ子どもとつくる 47) 大月書店 1997年
2. 鈴木のぼる 『ハンドメイドオカリナ』 いかだ社 2005年
 …上記以外にも本が出ているようですが自分はまだ見ることができていません。また、webでオカリナの作り方のあらましを紹介しているサイトもあります。それから、オカリナ状の楽器の原理を理解して作品を構想したり実際に作ったりするのに「手作り楽器」の各種書籍やサイトがとても役に立ちます。御参考まで。
 

 

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